
2025年、リユース業界は大きな転換期を迎えます。2023年10月に始まったインボイス制度は、対応のステージを上げ、2026年10月には経過措置の大きな変更が控えています。リユース業を営む皆様にとって、今こそ準備を始めるべき時です。
「個人からの買取は?」「免税事業者との取引は?」そんな疑問と共に、「インボイス制度で消費税負担はどうなる?」という不安も感じているかもしれません。
この記事では、インボイス制度理解の基礎から注意点、そして対応ポイントについて詳しく解説します。リユース事業を盤石にするためのヒントが満載です。インボイス制度を理解し、変化を先読みすることで、未来のリユース経営を成功に導きましょう。
目次
インボイス制度とは?【リユース業にも関係する基本を解説】

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除の仕組みと深く関わる制度です。事業者が国に納める消費税額を正しく計算するために、「適格請求書(インボイス)」という特定の要件を満たした請求書の保存が原則として必要になります。
この制度は、主に複数税率(標準税率10%と軽減税率8%)が混在する中で、どの商品にどの税率が適用されたかを明確にするために導入されました。リユース業においても、仕入れや販売時の消費税適用にはインボイス制度が影響するため、制度の理解は欠かせません。
適格請求書発行事業者とは?
適格請求書(インボイス)を発行できるのは、税務署に登録申請を行い、「適格請求書発行事業者」となった事業者だけです。この登録ができるのは、消費税の課税事業者である法人または個人事業主です。免税事業者は適格請求書を発行できません。ポイントは以下の通りです。
- インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」のみ。
- 登録できるのは「消費税の課税事業者」のみ。
- インボイスがないと、買い手側は原則として仕入税額控除ができない。
消費税の仕入税額控除の仕組み
事業者が消費者から受け取った消費税は、国に納める義務があります。しかし、事業者は商品を仕入れる際に支払った消費税を、売上時に受け取った消費税から差し引くことができます。これを「仕入税額控除」と呼びます。
例えば、100円(税抜)で商品を仕入れて消費税10円を支払い、200円(税抜)で販売して消費税20円を受け取ったとします。この場合、事業者が国に納める消費税は「20円(売上時の消費税)-10円(仕入れ時の消費税)=10円」となります。
インボイス制度導入後は、この仕入税額控除を受けるために、原則として仕入れ先から「適格請求書」を受け取って保存しておく必要があります。これがなければ、仕入税額控除が受けられず、結果として消費税の納税額が増えてしまう可能性があるのです。
リユース業(古物商)がインボイス制度で押さえるべきポイント

リユース業は、商品の仕入れや販売の形態が一般的な小売業とは異なるため、インボイス制度においても特有の注意点があります。特に「個人からの買取」が多い古物商にとっては、重要なポイントです。
「個人からの買取」における特例(古物商特例)
リユース業や古物商の多くは、一般の個人から商品を買い取っています。個人は通常、消費税の納税義務がない免税事業者であるため、適格請求書を発行できません。
そのため、インボイス制度には、古物商が個人から仕入れる場合などに適用される「古物商特例」というものがあります。
この特例により、古物商が適格請求書発行事業者ではない個人から特定の品目(古物など)を買い取る際には、買い取った側(古物商)が帳簿に一定の事項を記載することで、仕入税額控除を受けることができます。
具体的には、以下の事項を帳簿に記載する必要があります。
- 相手方の氏名または名称(個人である旨を記載)
- 住所または所在地
- 取引年月日
- 取引内容
- 対価の額
この特例は、リユース業のビジネスモデルを守る上で非常に重要です。正しく帳簿に記載することで、個人からの仕入れについても仕入税額控除が受けられます。
消費税の納税義務者かどうかの確認
あなたが消費税の納税義務者(課税事業者)であるか、免税事業者であるかによって、インボイス制度への対応は大きく変わります。
- 課税事業者の場合: 適格請求書発行事業者になっている場合は、インボイスの発行準備や受領したインボイスの保存・管理体制を確実に整える必要があります。
- 免税事業者の場合: 適格請求書を発行できないため、取引先が仕入税額控除を受けられなくなります。これにより、既存の取引先から取引の見直しを求められたり、新規取引が困難になったりする可能性もゼロではありません。課税事業者への転換やインボイス制度に対応した価格交渉なども視野に入れる必要が出てくるでしょう。
自身の状況を正確に把握し、適切な対応を検討することが重要です。
販売時の適格請求書発行義務
もしあなたが適格請求書発行事業者であれば、商品を販売する際に顧客から求められた場合、適格請求書を発行する義務が生じます。
リユース品の中には消費税率が異なるものや、複数税率が適用される商品が混在することもあります。例えば、食品は軽減税率が適用される場合があるなど、取り扱い商品によっては注意が必要です。
正確な税率を適用し、記載要件を満たしたインボイスを発行するための準備が必要です。
インボイス制度導入によるリユース業への影響とその対応策

インボイス制度の導入は、リユース業の業務フローや収益に少なからず影響を与えます。特に、2025年はその影響を具体的に感じ始める時期であり、対策が急務となります。
複数税率への対応と事務負担の増加
リユース業では、多種多様な商品を扱います。中には、消費税の軽減税率が適用される商品(飲食料品など)が含まれるケースも考えられます。
インボイス制度では、適切な税率区分ごとに消費税額を算出・記載する必要があるため、商品の仕入れや販売時における税率管理がこれまで以上に重要になります。
対策:
- 商品マスタの見直し:商品ごとに標準税率(10%)か軽減税率(8%)かを明確にする。
- 経理、会計処理の見直し:複数税率に対応した会計ソフトやPOSシステムの導入を検討し、事務処理の効率化を図る。
- 従業員への教育:消費税の知識、特に税率ごとの記載方法について周知徹底する。
免税事業者との取引への影響と、2026年控除割合変更への備え
あなたが課税事業者の場合、適格請求書を発行できない免税事業者(多くの個人が該当)から商品を仕入れた場合、原則として仕入税額控除ができません。ただし、この負担を軽減するための経過措置が存在します。
現在(2025年中)は、免税事業者からの仕入れであっても、2026年9月30日までは80%の仕入税額控除が認められています。
しかし、2026年10月1日からは、この控除割合が50%へと減少します。この変化は、個人からの買取が多い古物商にとって、実質的な消費税負担がさらに増加することを意味します。2025年は、この2026年の変化に備え、具体的な対策を講じる必要があります。
対策:
- 仕入れコストの再確認:免税事業者からの仕入れにおける消費税負担が、2026年10月以降にどのように増加するかをシミュレーションする。
- 取引先の確認:主要な仕入れ先が適格請求書発行事業者であるかを確認し、免税事業者にはインボイス制度への理解を求める。
- 価格交渉の検討:免税事業者との取引においては、将来的な消費税の負担増を考慮した買取価格・販売価格の見直しを、各事業者との個別交渉によって検討する必要があるかもしれません。
適格請求書発行事業者登録の検討と、2割特例・簡易課税の活用
現在免税事業者の方で、課税事業者への転換を検討中であれば、「2割特例(インボイス発行事業者の負担軽減措置)」の活用が大きなメリットとなります。この特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの期間にインボイス発行事業者になった場合に、売上税額の2割を納税額とするもので、2026年9月30日までの消費税申告分まで適用可能です。ただし、適用を受けるためには、事前に税務署への届出が必要です。2025年は、この特例を適用できる期間の終盤に差し掛かっていますので、早期の検討が推奨されます。
また、簡易課税制度も有力な選択肢です。リユース業(古物商)は、通常「第五種事業(みなし仕入れ率50%)」に該当します。この制度を利用することで、仕入れの際のインボイス保存が不要になり、事務負担を軽減できる可能性があります。ご自身の事業形態に合うかを税理士と相談し、最も有利な選択をしましょう。
2025年は、2割特例を適用できる期間の終盤に差し掛かっているだけでなく、2026年10月からの控除割合減少を見据えた対策を検討する上で重要な年です。事業者としての戦略や、取引先の状況によって最適な選択は異なります。影響をシミュレーションし、慎重に判断しましょう。
インボイス制度対応を強力サポート!POSシステムの活用

リユース業のインボイス制度対応において、業務の効率化と正確性を高めるために、POSシステムの活用は非常に有効な手段です。特に、古物台帳の管理や多種多様な商品の情報管理が求められるリユース業にとっては、その重要性は増すばかりです。
なぜリユース業にPOSシステムが必要なのか
リユース業は、新品商品を扱う一般小売店とは異なる特性を持っています。
- 一点物の管理:同じ商品でも状態や買取価格が異なるため、個別管理が必要です。
- 古物台帳の義務:古物営業法に基づき、買取・販売履歴を古物台帳に記録する義務があります。
- 複雑な消費税処理:個人からの買取、委託販売、免税事業者からの仕入れなど、消費税の処理が複雑になりがちです。
これらの特性に対応するには、汎用的なPOSシステムでは不十分である可能性が高いでしょう。リユース業に特化したPOSシステムであれば、これら全ての課題を効率的に解決し、インボイス制度へのスムーズな対応を可能にします。
インボイス制度にも対応しているリユース業向けPOSシステム『タロスPOS』
『タロスPOS』は、リユース業界向けに最適化したクラウド型のPOSシステムです。制度対応を含む機能改善を継続的に提供し、実店舗運用と本部管理の両面から業務改善を支援しています。2023年のインボイス制度開始に合わせて、インボイスに対応するアップデートを実施しました。店舗のPOS機能と本部システムの双方でバージョンアップを提供し、運用面の変更を含めて円滑な移行を支援しています。
適格請求書の要件に準拠した出力機能
事業者の登録番号、適用税率、税率ごとの消費税額、税込・税抜の区分など、インボイスに必要な項目をレシートや各種帳票に出力できるよう対応しています。
POSおよび本部システムの両機能での制度対応
店舗運用に関わるPOS側の機能強化に加え、本部システムでも適格請求書要件に沿った管理・出力に対応するためのアップデートを提供しています。
運用面のアップデートと導入支援
制度に合わせたアップデートの告知・順次適用を行い、必要な設定手順・運用変更点についてのガイドをご用意しています。
まとめ|リユース・古物商の未来を拓くインボイス制度への対応
インボイス制度は、リユース業の事業者にとって、決して無視できない制度です。しかし、その内容を正しく理解し、適切な対策を講じることで、業務の効率化やコンプライアンス強化のチャンスと捉えることもできます。
2025年は、インボイス制度の経過措置における重要な節目です。2026年10月に控える控除割合の変更を見据え、今から準備を進めることで、将来的な消費税負担の増加を最小限に抑え、経営の安定化を図ることができます。事業環境の変化に柔軟に対応し、インボイス制度を逆に事業効率化や売上拡大に活用できる視点を持つことが重要です。